「もしかして、私の口臭が気になるのかな…」そんな風に悩んだことはありませんか?実は、口臭の原因の一つに、歯周病が深く関わっている可能性があります。大阪市生野区のふるかわ歯科、古川先生に、口臭と歯周病の関係性について詳しくお話を伺いました。先生によると、歯周病はただ歯がぐらつくだけでなく、口臭の原因にもなる深刻な病気なのだとか。
今回のインタビューでは、歯周病が引き起こす口臭の原因や、予防方法、そして、健やかな口内環境を保つためのヒントを分かりやすく解説していただきます。先生のお話を通して、口臭の悩みから解放され、自信を持って笑顔で過ごせるようになる第一歩を踏み出しましょう。
監修者
ふるかわ歯科 古川 尊寛 院長
根管治療・歯周病・インプラントなど、多くの修学実績を持ち、インプラント専門医の資格も習得。マイクロスコープ、高精度3Dスキャンなど最新技術を駆使し、地域に根ざした抜かずに守る「見える」治療を目指しています。
口臭の原因は一体何かを教えてもらいます
ずばり口臭の原因は何ですか?
口臭の原因というのは、実はたくさんあって、これだけを避ければいいというものではないんです。ただ、一番多い原因として挙げられるのは、口の中の細菌なんですね。特に歯周病を患っている方の口臭は特徴的です。
実は、重度の歯周病の方は電車に乗り合わせただけでも『あ、この方は歯周病かな』とわかることがあるんです。私たち歯科医療の世界では『ペリオ(歯周病)患者さん』と呼んでいるのですが、中度から重度の歯周病の方は、特徴的な臭いがあるんですよ。
編集部
離れていても、わかるんですか?
古川 尊寛 院長
そうなんです。だいたい1~2メートルくらいの範囲でわかることが多いですね。電車の中で横に立っている方でもわかることがあります。私たちの間では『Pさんがいらっしゃる』って言うこともあります。Pというのは、ペリオの頭文字なんですけどね。歯医者さんに行ってほしいなと思っちゃいますね。
口臭にもいろいろ種類があるのでしょうか?
はい、本当にいろいろな種類があるんです。まず口の中が原因のものもありますし、胃の調子が悪い時に出る口臭もあります。それと、意外と多いのが口の乾燥が原因の口臭なんです。
例えば、講習会などでお話をされる方や、営業職の方、広告のプレゼンテーションをされる方など、お話をする機会の多い方は特に注意が必要です。というのも、話すことで口が乾燥しやすくなるんですね。口呼吸をしている方も、通常の方より口臭が気になりやすいですし、さらに歯並びも悪くなりやすい。これは口を閉じていないことが原因なんです。
口臭で性別や年齢は関係ありますか?
性別による違いはあまりないんですが、年齢による特徴はありますね。お子様の場合は、ほとんど口呼吸が原因です。それ以外の年齢層では、だいたい半分くらいは歯周病が原因じゃないでしょうか。『おじさんは口臭がする』というイメージをお持ちの方が多いと思うのですが、これは年齢とともに歯周病が進行しやすくなるからなんです。
ただ、誤解してほしくないのが、若い方でも歯周病による深刻な口臭で悩まれている方は少なくないんです。20代でも、単に歯磨きが不十分とか虫歯だけでなく、重度の歯周病の方もいらっしゃいます。年齢に関係なく、口腔ケアはとても大切なんですよ。」
その原因になるものが色々ありすぎて、コレを避けたら良いと言うのは難しいんですけれど、特に口の中のバイ菌で臭うのは、歯周病の人です。歯周病の人は本当にひどい人の場合、「この人は!」ってわかります。
口臭は自分で気づけるものなのか
口臭をチェックする方法はありますか?自分で気づけるものですか?
実は、自分では気づきにくいものなんです。多くの方が『自分の口臭ってどうなんだろう?』と悩まれるのですが、なかなか自己判断は難しいんですよ。例えば、手のひらで息を受け止めて確認する方法がありますが、これも完璧とは言えません。というのも、私たちは自分の臭いに慣れてしまっているので、よほどひどい状態でない限り、自分では気づきにくいんです。
逆に言えば、周りの方の反応で気づくことが多いかもしれませんね。そういう意味では、定期的な歯科検診で専門家に診てもらうのがいいかもしれません。
歯周病の人は、例えばどういう臭いなど具体的に教えてください
これは少し言いにくい話なのですが…歯周病による口臭は、かなり特徴的な臭いがします。例えるなら、4時間ほど放置された生ごみのような臭いに近いでしょうか。ニンニクのような食べ物の臭いとは全く異なる特徴があります。
ただ、これも自分では気づきにくいものなんです。結局のところ、正確に判断するためには歯科医院で検査を受けていただくのが一番確実です。面白いことに、口臭を気にされている方の中には、実際にはそれほど深刻ではないケースも多いんです。逆に、あまり気にされていない方の中に、実は治療が必要な方もいらっしゃいます。
歯周病による口臭は治せるのでしょうか?
はい、治せます。歯周病の原因となる細菌が減少し、口腔内の環境が改善されれば、口臭も徐々に改善されていきます。ただし、治療方法は症状の程度によって異なります。
治療には大きく分けて、基本治療と手術による治療があります。基本治療は保険が適用されるので、3割負担で治療を受けることができます。例えば、歯石の除去や歯周ポケットの清掃、お薬を入れる治療などがこれにあたります。
より進行した症例の場合は、手術が必要になることもあります。手術には保険適用外のものもあり、その場合は1回あたり10万円程度かかることもあります。例えば、骨を再生させる治療では、人工骨を使用したり、場合によっては患者さんご自身の骨を移植したりすることもあります。
ただし、手術ができる方には条件があります。まず2~3ヶ月ほどの基本治療を行って、歯周病の菌を減らし、歯肉の状態を改善する必要があります。例えば、歯周病の検査時の出血が20%以下になることなどが手術の条件になります。血が出やすい状態では手術はできませんので、まずは基本治療をしっかり行うことが大切です。
残念ながら、症状があまりにも進行している場合は、手術による治療が難しいこともあります。そういった場合は、歯を抜いてインプラントを入れる、あるいは定期的なメンテナンスで現状維持を図るといった方法を選択することになります。
歯周病になってしまった場合どうしたらいいのか
歯周病になってしまった場合、完治するまでの間に臭いを抑える方法はあるのでしょうか?
まず、治療を始めていただければ、徐々に症状は改善されていきます。数回の治療でも、口臭はかなり軽減されるはずです。
よく患者さんから『マウスウォッシュは効果がありますか?』という質問をいただくのですが、これは補助的な意味で効果はあると思います。ただし、マウスウォッシュだけで歯周病が治るということはありませんよ。あくまでも基本は丁寧な歯磨きです。
歯磨きをしっかりできている方であれば、マウスウォッシュは必須というわけではありません。ただ、お口の中がすっきりする感覚が欲しい方は使っていただいても構いません。マウスウォッシュを使用することで特に悪影響が出るということもないですし、プラスアルファの効果として考えていただければと思います。きちんと歯磨きができていれば、うがいは水でも十分なんです。
編集部
40代ぐらいから歯周病になる人が増えるとお聞きしましたが、なぜ40代からリスクが上がるのですか?
古川 尊寛 院長
これは実は体の免疫力との戦いなんです。年齢とともに免疫力が低下してくることが一つの要因です。それに加えて、口の中の細菌叢(そう)は人によってかなり個人差があります。例えば、悪玉菌が多い方は若いうちから歯周病が進行してしまうこともあるんです。
編集部
例えば食生活の改善や、歯によいとされる食べ物などは効果がありますか?
古川 尊寛 院長
実は、『これを食べていれば歯周病予防になる』というような、そう単純な関係性はないんです。確かに歯周病予防に効果があるとうたっているサプリメントやタブレットなども市販されていますが、正直なところ、その効果については科学的な根拠が明確でないものも多いですね。私自身も、効果があるかもしれないと思って購入を検討することもありますが、それほど期待はしていないというのが本音です。
歯周病は遺伝など関係がありますか?
確かに、歯周病への感受性には個人差があります。歯周病の原因となる細菌は誰でも持っているのですが、実はその細菌にも様々な種類があるんです。そして、人によって持っている細菌の種類や量が異なります。中でも、特に悪玉菌が多い方は歯周病になりやすい傾向にあります。
実は、どのような細菌を持っているかを調べる検査方法もあるんです。ただし、これは保険適用外の検査になりますので実費となります。当院でもルーティンでは行っていない検査なのですが、必要に応じて検査することは可能です。
編集部
歯周病などで一度下がってしまった歯茎は元に戻るものなんでしょうか?
古川 尊寛 院長
これはケースバイケースなんです。100%元に戻るケースは、実はそれほど多くないかもしれません。特に症状が進行している場合は、完全な回復は難しいと考えていただいた方がいいでしょうね。例えば、単に歯茎だけが下がっているような軽度のケースであれば、ある程度回復は期待できます。ただ、歯茎の下の骨まで失われているような場合は、100%までの回復は難しいというのが現状です。
編集部
特殊な口臭がある段階で、もうほぼほぼそのドライマウスとかでない限り、歯周病由来の口臭だから、結局しっかり歯を磨いてちゃんと歯医者に行くということですね?
古川 尊寛 院長
そうですね。口腔由来の口臭が圧倒的に多いので、まずは歯科受診をお勧めします。ただし、稀に口腔以外が原因で口臭が発生することもあります。その場合の見分け方なのですが、もし口の中が非常に清潔な状態なのに口臭が気になる場合は、別の原因を疑う必要があります。まずは口腔内をきれいにして、それでも改善しない場合は、他の要因を探っていくというスクリーニングの方法をとります。ちなみに、親知らずの炎症でも口臭が発生することがありますよ。慢性的な炎症の場合、強い痛みはなくても、じわじわとした違和感があったり、じくじくした感じがあったりする程度なので、気づきにくいんです。そういった患者さんも多くいらっしゃいます。
普段の口臭・歯周病予防はどうしたらいいのか
歯周病に効くと謳われている歯磨き粉は本当によいのでしょうか?
確かにいろいろな商品が販売されていて、それぞれ効果があるような成分も配合されているのですが、正直なところ、気休め程度と考えていただいた方がいいかもしれません。もちろん、開発して製品化されているものですから、全く意味がないわけではないとは思いますが…。
ただし、一つだけ絶対に気をつけていただきたいことがあります。歯周病の方は『つぶつぶ』が入った歯磨き粉は絶対に使わないでください。これは本当に重要なポイントです。
編集部
それはなぜですか?
古川 尊寛 院長
歯周病になると、歯と歯茎の間に『歯周ポケット』という隙間ができるんです。そこに歯磨き粉の顆粒(つぶつぶ)が入り込んでしまうと、取り除くことが難しく、かえって炎症を引き起こす原因になってしまいます。健康な方であれば、そこまで大きな問題にはならないことが多いのですが、歯周病の方は絶対に避けていただきたいですね。一度ポケットの中に入り込んでしまうと、そこがつぶだらけになってしまいますから。
歯周病に良い歯ブラシはありますか?
はい、歯ブラシの選び方は重要です。特に質の良い歯ブラシを選んでいただきたいですね。歯茎に当てても刺激が少ない、チクチクしないような毛質のものがおすすめです。少し柔らかめのものが良いですね。確かに値段は少し高めになりますが、それだけの価値はあります。毛の質はもちろん、毛先のカットの仕方なども様々な工夫がされているんです。
編集部
ちなみに古川先生は歯磨き粉は何をお使いですか?
古川 尊寛 院長
私は歯磨き粉は3Mのクリンプロを使っています。これは歯科医院専売品なので、一般のスーパーやドラッグストアではなかなか見かけないかもしれません。ネットで購入できる可能性はあります。実際に自宅でも使っていますが、かなり良い製品だと実感しています。
歯ブラシは特にこだわっていないです。よくある歯ブラシを使用していますよ。
編集部
フロスについてはいかがですか?
古川 尊寛 院長
実は私自身はフロスは使っていないんです。ただ、歯と歯の間に食べ物が詰まりやすい方や、歯の詰め物をされている方には、フロスの使用をお勧めしています。フロスに関しては、特別なものを選ぶ必要はなく、ご自身が使いやすいと感じるものを選んでいただければ良いと思います。
歯周病かも?でもよくわからない」とお思いの患者さんへ
まずは意識を持つことが大切だと思います。そして定期的に歯科医院でクリーニングを受けることをお勧めします。実は、定期的に検診に来られている方で、突然歯周病が重症化するというケースはほとんどありません。
検診の間隔についてですが、基本的には半年に1回のペースで良いと思います。ただし、リスクが高い方は3ヶ月に1回のペースをお勧めしています。もちろん、潜在的に歯周ポケットがある方は、急に症状が悪化することもありますので注意が必要です。
それと、大切なのは『かかりつけ医』を持つことです。毎回違う歯科医院に行ってしまうと、症状の変化を正確に把握することが難しくなります。同じ医院で継続的に診察を受けることで、データの蓄積ができ、より適切な治療方針を立てることができます。
また、歯周病検査の結果についても、積極的に先生に聞いていただけるといいですね。最近は検査結果を紙で出してくれる医院も増えていて、歯周ポケットの深さや出血の程度などをパーセンテージで示してくれます。この結果によって、次回の検診までの期間を調整したり、必要に応じて再度クリーニングを行ったりします。
つまり、定期検診は1回で終わりではなく、継続的な管理が必要なんです。検査結果に応じて、より丁寧なクリーニングが必要になることもありますし、検診の間隔を短くする必要が出てくることもあります。これらは全て検査結果に基づいて、私たち医師が提案させていただきますのでご安心くださいね。
古川 尊寛 院長(ふるかわ歯科)
大阪市生野区/南巽駅 1番出口 徒歩5分
愛知学院大学を卒業し、大阪歯科大学附属病院総合診療科勤務などの様々な経験を経て、2011年に父より継承開業。1973年の開業以来、地域に根差した高い医療を提供しており、2023年で50周年を迎えました。根管治療・歯周病・インプラントなど、多くの修学実績を持ち、インプラント専門医の資格も習得。マイクロスコープ、高精度3Dスキャンなど最新技術を駆使し、地域に根ざした抜かずに守る「見える」治療を目指しています。
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