坪井歯科医院院長の坪井先生は、1978年に阪急伊丹駅前で開業以来、革新的な歯科治療の実践者として知られています。開業当初から、一本一本の歯を単独で治療するのではなく、口腔内全体のバランスを重視し、正しい噛み合わせ(咬合)を実現する治療法を実践してこられました。これは当時としては先進的なアプローチでした。
1990年代には、歯周病と糖尿病の密接な関連性についての研究をアメリカで深められ、その重要性を日本全国の歯科医師と医師に広く発信。特に地元兵庫県では、歯科医師会副会長として、内科医や眼科医と協力しながら、糖尿病対策の先駆的な活動を展開されてきました。
現在は公職から退かれ、診療に専念するため、クリニックを全面リニューアル。最新の設備と長年培ってきた経験を活かし、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を提供されています。
歯科医師になるために
坪井先生が歯科医師を目指そうと思われたきっかけは?

実は私の両親は歯科医師ではなかったんですが、母方の親族に歯科医師が多くいまして。母も私に歯科医師になって欲しいという願いを持っていたようですね。それに、10歳上の兄が大阪歯科大学に進学していたこともあり、自然と私も同じ道を目指すようになりました。兄の姿を見ながら育ってきた環境が、私の進路選択に大きな影響を与えたと思います。
坪井先生が診療の際に心がけておられることは何ですか?
私が最も大切にしているのは、口腔内全体を総合的に見ながら治療を進めることです。例えば虫歯の治療一つとっても、その部分だけを治せば良いというわけではありません。虫歯の治療に集中するあまり、治療後の噛み合わせがおかしくなってしまうと、それが新たな問題を引き起こす可能性があるんです。
もちろん、痛みを訴えて来院された患者さんの場合は、まず第一にその痛みを取り除くことを優先します。ですが、その治療を進めながらも、常に口腔内全体のバランスを意識しているんです。
この考え方の基礎になっているのが、私の専門教育の経験です。大学卒業後、東京の国際デンタルアカデミーで保母須弥也先生のもとで2年間学ばせていただきました。保母先生はインディアナ大学歯学部大学院を修了された方で、当時の日本では歯科医療の第一人者でした。先生が提唱されていた咬合、つまり噛み合わせの重要性に深く感銘を受け、私も日本顎咬合学会の設立メンバーとして参加させていただきました。
伊丹で開業して以来、この考えを基本に据えて診療を行っています。その際に特に重視しているのが、患者さんとのコミュニケーションです。治療方針について複数の選択肢を提示しながら、患者さんと相談しつつ最適な治療を進めていくようにしています。
歯周病について
どれくらいの人が歯周病に罹っていますか?

歯周病は実は想像以上に多くの方が抱えている問題なんです。成人性の歯周病は20歳を過ぎたあたりから徐々に増えていきまして、40代になると実に約80%の方が何らかの歯周病の症状を持っているんです。これだけ多くの人が影響を受けているということで、まさに国民病の一つと言われているわけです。
最近特に気になるのが若年化の傾向です。学校検診で小中学生を診察すると、歯茎の一部が腫れていたり、出血が見られたりするケースが増えています。これには現代の食生活の変化が関係していると考えられます。特に歯に粘着しやすい食品の摂取が増えていることが、一つの要因ではないかと推測しています。
そもそも歯周病とは何なんでしょうか?
歯周病の始まりは、実はとても単純なところにあります。歯と歯茎の境目に歯垢が溜まるんですが、これは口腔内の細菌の集まりなんです。この中にいる有害な細菌が最初に引き起こすのが歯肉炎という状態です。
歯肉炎になると歯周ポケットというものができます。これは歯茎が腫れて、歯と歯茎の境目が袋状に深くなった状態のことを指します。このポケットにまた細菌が溜まってしまい、悪循環に陥ってしまうんです。
この状態が続くと、今度は歯槽骨という、歯の根っこを支えている骨が細菌によって溶かされていきます。歯槽骨は文字通り歯の土台となる大切な骨なので、これが溶けていくのは深刻な問題なんです。
どんな症状が出ますか?
歯周病の厄介なところは、かなり進行するまで明確な症状が現れにくいということなんです。初期の症状としては、歯茎が赤くなったり、腫れたり、歯を磨いた時に出血したりします。症状が進むと膿が出てくるようになります。
更に進行すると、歯が動くようになってきます。歯が動くと当然、噛むときに痛みを感じるようになり、しっかりと噛めなくなってしまいます。最終的には歯を支えている歯槽骨が溶けてしまい、歯が抜け落ちてしまうという結果になってしまうんです。
虫歯と違って痛くないんですか?
そうなんです。虫歯の場合は「しみる」とか「痛い」という症状がはっきり出るので、早めに気付きやすいんですが、歯周病はそういった自覚症状が出にくいんです。
特徴的なのは、20歳を過ぎてから20年、30年という長い時間をかけて、本人が気付かないうちに少しずつ進行していくということです。多くの方が40代、50代になって、出血や膿の症状が出てから初めて気付くというケースがほとんどです。
もう一つ特徴的な症状として口臭があります。これは膿が出ることと、歯周病菌が増殖することで発生する特有のニオイなんです。表現が適切かどうか分かりませんが、例えるならドブの泥のようなニオイですね。口臭の程度には個人差がありますが、このような強い口臭が出ている場合は、既にかなり歯周病が進行しているというサインだと考えられます。
歯周病の治療とは?
実は面白いことに、自分が歯周病だと気付いて来院される方はとても少ないんです。私たち歯科医師としては、できるだけ早い段階で発見して治療を始めたいと考えています。そのため、他の症状で来院された患者さんにも、様々な検査をさせていただいています。例えば、レントゲン撮影や、歯と歯茎の溝の深さを測る「ポケット検査」などですね。
歯周病は本当に「静かな病気」なんです。多くの場合、私たち歯科医師が「実は歯周病の症状が出ています」とお伝えして、初めて患者さんが気付くというケースがほとんどです。
治療は、まずプラーク(歯垢)のコントロールから始めます。患者さんご自身で歯垢をしっかりと除去できるよう、歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスの正しい使い方を丁寧に指導させていただきます。これと同時に、専門的な歯石の除去も行っていきます。
歯石は自分では取れないものですか?
残念ながら、歯石は自分では取ることができないんです。これは歯科医師や歯科衛生士が専用の機器を使って除去する必要があります。
歯と歯茎の境目や、歯周ポケットの中に隠れている歯石を丁寧に取り除きながら、定期的に検査を行って経過を観察します。この作業を繰り返すことで、初期から中等度の歯周病であれば、進行を止めることができます。
中等度の歯周病の場合、既に歯槽骨が部分的に溶けてしまっている状態です。残念ながら一度溶けた骨は元には戻りませんので、早期発見して骨の溶解を食い止めることが治療の要となります。
歯茎の奥深くに歯石が多く溜まっているケースでは、歯茎を切開して直接歯の根を観察しながら歯石を取り除く治療を行うことがあります。聞くと痛そうに感じられるかもしれませんが、しっかりと麻酔をしますので治療中の痛みはありません。治療後も適切な投薬を行いますので、心配されるほどの苦痛はありません。
歯周病が完治するのに、どれくらいの期間がかかりますか?
実は歯周病の場合、私たちが医学的に言うところの「完治」は難しいんです。というのも、一度溶けてしまった歯槽骨は元には戻らないからです。ただし、歯茎の状態を健康な状態に戻すことは可能です。
つまり、プラークコントロールと歯石除去によって歯茎を健康な状態に保ち、これ以上歯槽骨が溶けるのを防ぐことが治療のゴールになります。
治療期間は症状によって大きく異なります。若い方で軽度の歯肉炎程度であれば、適切なブラッシング指導と歯石除去で1週間程度で改善が見られます。一方、歯槽骨の溶解が始まっている場合は、1〜2ヶ月かけてじっくりと治療を進めていきます。
その後は定期的なメンテナンスが重要になってきます。歯周病は生活習慣病の一つですから、症状が表面化しにくい特徴があります。たとえ自覚症状がなくても、定期的に歯科検診を受けることで早期発見が可能です。例えば3ヶ月に1回程度のメンテナンスを続けることで、歯周病の予防や進行抑制が可能になります。これは口臭予防にも直接つながってきますよ。
歯周病と全身疾患について
坪井先生の歯周病と全身疾患についての活動のきっかけは?

私の転機となったのは1990年代の経験なんです。当時、私たちのスタディーグループでは毎年、カリフォルニア州にあるUCLA(カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)に研修に行っていました。歯周病とインプラントについて学んでいた中で、とても衝撃的な報告に出会ったんです。UCLAの教授から「歯周病と糖尿病との関係」について詳しい説明を受けたのですが、その内容に大変驚きました。
その後、日本でも糖尿病専門医の間でこの関係性が認識されるようになっていきました。これは歯科医療における大きな発見の一つだったと思います。
兵庫県歯科医師会常務理事(後に副会長)として、そのことを広められたのですか?
はい、兵庫県歯科医師会の代表として、県の「糖尿病対策推進協議会」に委員として参加させていただく機会がありました。ご存じの通り、糖尿病は今や国民病と言えるほど広く認識され、多くの方が危惧している病気です。そのため、歯科との関連性を啓発することが非常に重要だと考えられ、私たちに声がかかったんです。
具体的な活動としては、糖尿病の専門医や眼科の先生方と一緒に県内各地を回り、市民講座を開催しました。その中で特に歯周病と糖尿病の関係について、私が担当して皆さんにお伝えする活動を続けてきました。
芝池 高之
糖尿病以外に関連のある病気はありますか?
実はたくさんあるんです。1990年代に比べると、現在では多くの科学的根拠が示されています。
まず、先ほどお話しした糖尿病との関係は特に密接です。それ以外の代表的な例としては、心筋梗塞や脳梗塞との関連が挙げられます。また、重度の歯周病を持つ妊婦さんの場合、早産や低体重児出産のリスクが高まることも分かっています。
最近では、がんや認知症との関連性も指摘されています。このように口腔内の病気が全身の様々な疾患と密接に関連していることが、新聞などでも度々取り上げられているんです。
高齢者の誤嚥性肺炎はどうですか?
ああ、これは非常に重要な問題ですね。毎年、多くの高齢者の方が誤嚥性肺炎で亡くなられています。
仕組みを簡単に説明させていただきますと、通常、私たちが呼吸をしているときは気管支が開いています。食べ物を飲み込むときには「ペコン」と気管支に蓋がされて、食道につながるのが正常な状態なんです。
ところが高齢になると筋力が低下して、この「ペコン」という反応が鈍くなってしまいます。すると唾液を飲み込むときでも気管支の蓋がうまくできず、唾液が気管支を通って肺に入ってしまう。この時に口の中の歯周病菌なども一緒に肺に入ってしまい、肺炎を引き起こすんです。
つまり、歯周病自体が誤嚥を引き起こすわけではありません。加齢による誤嚥が起きたときに、口腔内に歯周病菌が多くいると、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるということなんです。
歯周病と糖尿病の関係についての認知度はどうでしょうか?
歯科医師の間ではほぼ全員が認識していると思います。一般の医師については正直なところ、認知度を把握しきれていませんが、少なくとも糖尿病の専門医の間では広く認識されています。実際、糖尿病の標準治療において、歯周病は糖尿病から派生する合併症の一つとして明確に位置づけられています。
特に興味深いのは、歯周病と糖尿病には相互作用があるということです。歯周病の進行を止めると糖尿病の症状も改善し、逆に糖尿病をコントロールすると歯周病の進行も抑えられる。この関係性が非常に重要なんです。
具体的な例を挙げますと、歯周病の治療を行うとA1c(エーワンシー)という数値が下がることが分かっています。A1cというのは血糖値のコントロール状態を示す指標で、5%以下が正常値とされています。糖尿病は完治することはありませんが、この数値が改善するということは、糖尿病の状態が良くなっているということを示しているんです。
歯周病は心臓病にも関係がありますか?
これは非常に重要な質問なのですが、残念ながらまだまだ一般の方々には十分に認識されていない問題です。実は歯周病と心臓病には、とても密接な関係があるんです。
歯周病によって口の中で慢性的な炎症が起きると、体は特殊な物質を放出します。これを専門用語で「サイトカイン」と呼んでいます。このサイトカインと、歯周病の原因となる細菌が血液の流れに乗って体中を巡るんです。これらが血栓、つまり血液の塊を作りやすくする働きがあります。
この血栓が非常に厄介なんです。例えば心臓に到達すると心筋梗塞を引き起こす可能性があり、脳に到達すると脳梗塞の原因となります。さらに、腎臓病や妊婦さんの早産なども、このサイトカインや歯周病菌が血流に乗って引き起こされることがあるんです。
血液は全身を巡っているわけですから、歯周病は文字通り全身の病気のきっかけになり得るんです。これは決して誇張ではなく、科学的な研究でも明らかになっている事実なんです。
芝池 高之
つまり、歯周病は体中にばい菌をばらまいているということでしょうか?
そうですね。ただし、歯周病の原因となる細菌はとても特殊な性質を持っています。実は、これらの細菌は健康な人の口の中にも少量存在している常在菌なんです。問題は、歯周病が進行すると、これらの細菌が異常に増殖してしまうことです。
特筆すべき点は、これらの細菌の生存環境です。専門用語で「嫌気性菌」と呼びますが、酸素を必要としない環境で生きることができ、特に歯茎の中で増殖する特徴があります。これらの細菌は増殖すると様々な毒素を放出し、それが体に悪影響を及ぼすんです。
歯周病菌の特殊な性質について、もう少し詳しくお話しすると、これらの細菌は通常の細菌とは異なる代謝システムを持っていて、それが毒素の産生につながっているんです。また、生体防御システムから逃れる能力も持っているため、一度増殖し始めると制御が難しくなります。
芝池 高之
「歯周病の治療が全身疾患の予防になる」と言ってもよいのでしょうか?
はい、それは間違いなく言えます!実際、歯周病の治療や予防は、全身の健康維持に大きく貢献するんです。
例えば、口臭の問題を考えてみましょう。口臭の主な原因は、磨き残したプラーク(歯垢)に含まれる細菌です。特に歯周病に罹患している方の場合、歯周病菌が放出する特有のガスが強い口臭の原因となります。また、虫歯がある場合も、それぞれ特徴的な臭いが発生します。
実は口臭の約90%は口腔内が原因とされています。ですから、歯周病に限らず、お口の中全体の健康状態が口臭に大きく影響するんです。
さらに重要なのは、歯周病の治療が様々な全身疾患の予防や改善にも効果があるということです。先ほどお話した心臓病や糖尿病との関連を考えても、歯周病の治療は単なる口腔ケアを超えた、全身の健康管理の一環として捉えることができます。
私たち歯科医師が特に強調したいのは、歯周病の予防と治療が、実は全身の健康を守る重要な第一歩になるということです。口腔内の健康が全身の健康に直結している―この認識を持っていただくことが、とても大切だと考えています。
良い歯医者を選ぶためには
ズバリ!患者さんが歯医者さんへ行くことを躊躇う理由は何だと思いますか?

この質問は歯科医師として常に考えていることなんです。一番大きな理由は、やはり「痛い治療をされるのではないか」という不安や先入観だと思います。特に年配の方々の中には、昔の歯科治療で痛い思いをされた経験からトラウマを抱えている方も少なくありません。
実は現代の歯科医療は、技術や設備の進歩により、ほとんど痛みを感じることなく治療を受けていただけるようになっています。麻酔技術も格段に進歩して、注射の痛みさえもかなり軽減できるようになりました。
それでも、診療台に座って「キーン」という器具の音を聞くと、つい緊張してしまう方が多いですね。これは一種の条件反射とも言えます。また、「治療費が高額になるのではないか」という経済的な不安や、「虫歯を見つかって叱られるのではないか」という心理的な不安も、受診を躊躇う理由として挙げられます。
私の診療室では、こうした患者さんの不安を少しでも和らげられるよう、まずはリラックスした雰囲気で話を聞くことから始めるようにしています。
芝池 高之
予防歯科という考え方を持ってもらうための、歯科医師としての使命は何でしょうか?どうすれば、気軽に歯医者へ行ってもらえると思いますか?
この問題は私たち歯科医師にとって、非常に重要な課題です。実際のところ、ほとんどの患者さんは何かしらの痛みや不調を感じてから来院されます。初めは当然、その痛みのある部分の治療から始めますが、一回の治療で完治することはほとんどありません。
また、患者さんが気付いていない問題がほかにもあることが少なくありません。自覚症状がなくても、実は治療が必要な箇所が見つかることは珍しくないんです。これらの治療のために、複数回の来院が必要になります。
この一連の治療過程で、私は単に治療するだけでなく、お口の健康と全身の健康との関係について、丁寧に説明するようにしています。人間は一度聞いただけではなかなか理解が深まりませんが、治療のたびに繰り返し説明を受けることで、徐々に理解が進んでいきます。
そうしているうちに、ある時点で患者さんの「健康観」が大きく変化するんです。例えば、「食べ過ぎは体に悪い」「睡眠不足は健康に悪い」というのと同じように、「適切な歯磨きをしないと健康に悪影響がある」という認識が芽生えてきます。
この認識の変化が起きると、自然と家での歯磨きも丁寧になり、定期的な歯科検診やメンテナンスを受けることが生活習慣の一部として定着していくんです。
特に今は「人生100年時代」と言われています。100歳まで自分の歯で食事を楽しめることは、人生における大きな幸せの一つだと思います。その実現のためにも、予防的な歯科医療の重要性を、より多くの方々に理解していただきたいと考えています。
さらに、予防歯科の考え方を広めるためには、私たち歯科医師側も従来の「治療中心」の診療スタイルから、「予防・管理中心」の診療スタイルへと転換していく必要があります。そのためには、患者さんとの信頼関係を築き、長期的な視点での口腔ケアの重要性を共有していくことが不可欠だと考えています。
歯医者を選ぶにあたってこうすれば良いなどアドバイスをお願いします
これは本当に多くの方が直面している問題ですね。確かにインターネット上には膨大な情報があふれていますが、そこから自分に合う歯医者を見つけ出すのは本当に難しい作業です。
昔は地域のコミュニティの中で、主婦たちの井戸端会議のような形で、顔を合わせての生きた情報交換がありました。「あの歯医者さんは丁寧よ」とか「ここの先生は説明が分かりやすいわ」といった具体的な評判が、直接伝わっていたんです。でも現代は生活様式が大きく変わって、そういった対面での情報交換の機会が減ってしまいました。
そこで私がお勧めする最も確実な方法は、実際にいくつかの歯科医院に初診として足を運んでみることです。これは少し手間のように感じるかもしれませんが、実は非常に効果的な方法なんです。初診での30分程度の時間で、その医院の全体的な印象をつかむことができます。医院全体のホスピタリティ、先生の説明の丁寧さ、スタッフの対応など、実際に体験することで、自分に合う医院かどうかを判断することができます。
また、できれば午前と午後の異なる時間帯に訪れてみるのも良いかもしれません。時間帯によって医院の雰囲気や対応が大きく変わることもありますから、これも判断の材料になるでしょう。
自分に合う歯医者を患者自身が見分ける方法はあるでしょうか?
これは非常に重要な視点です。結局のところ、患者さんも歯科医師も人間ですから、相性というものが必ず存在します。先ほどお話した方法で歯医者を選んでも、実際に通院を重ねていく中で、最初の印象と違って「自分には合わないな」と感じることもあると思います。
そういった場合は、無理に通い続ける必要はありません。現在進行中の治療に一段落ついた時点で、別の歯医者に移られても全く問題ありません。むしろ、ご自身に合った歯医者を見つけることは、長期的な口腔ケアのために非常に大切なことです。
私の経験から申し上げますと、良い歯医者との出会いのポイントは、コミュニケーションの質にあると思います。治療方針や選択肢を丁寧に説明してくれる、質問にきちんと答えてくれる、診察や治療の手順を分かりやすく伝えてくれる、そういった基本的なコミュニケーションが充実している医院を選ぶことをお勧めします。また、予防的な歯科医療についての考え方が自分と合うかどうかも、長期的な関係を築く上で重要な要素になってきます。
芝池 高之
逆に、坪井先生だったらこんな歯医者には行きたくないと思うのはどんな医院ですか?
やはり不衛生な医院には行きたくないですね。診察室や待合室など、患者さんの目につくところが不衛生な歯医者さんは、細部へのこだわりが足りないように感じます。実は、これは診察の質にも大きく関わってくるんです。口の中を診察するとき、『どこかに問題がありそうだ』という意識で丁寧に診る歯医者と、『たぶん大丈夫だろう』と安易に考えながら診察する歯医者では、患者さんの健康に大きな影響を与えかねません。ただ、最近は衛生管理への意識が高まり、不衛生な医院は本当に少なくなりましたね。
歯科の特徴として、歯を削ったときの粉じんが院内に広がりやすいという問題があります。そのため、私たちは空気清浄機や口腔外バキュームを使って、常に院内を清潔に保つよう努めています。実際、このような徹底した衛生管理のおかげで、コロナ禍においても歯科医院ではクラスターの発生を防ぐことができました。
坪井先生からみなさんへメッセージをお願いします
私たちの社会は長寿化が進んでいますが、長く健康に生きるためには、歯の健康が非常に重要です。歯科医師として、患者さんの歯を長く守っていくことが、私たちの大切な使命だと考えています。ただし、これは歯科医師だけの力ではできません。皆さんご自身による日々のお口のケアが欠かせないんです。歯科医師と患者さんが二人三脚で取り組んでこそ、一生自分の歯で食事を楽しむことができます。
これは21世紀を生きる私たちにとって、とても大切なことなんです。先ほどもお話ししましたが、歯を失う主な原因は歯周病と虫歯です。虫歯の場合は、痛みやしみるなどの症状が出るため、歯医者に行くきっかけになりやすいという特徴があります。
坪井 新一 院長(坪井歯科医院)
伊丹市/伊丹駅(阪急) 北口 徒歩1分
歯学博士として、歯周病学を中心に国内外の最新技術を取り入れながら、地域医療に貢献しています。「口の健康が全身の健康を支える」という理念のもと、虫歯や歯周病治療から予防歯科、審美歯科まで幅広く対応。公職や学術活動にも積極的に取り組み、健康寿命を延ばす歯科医療を目指しています。
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施設情報
医院名 |
坪井歯科医院 |
所在地 |
〒664-0858
兵庫県伊丹市西台1丁目3−1 伊丹駅前サンハイツ 2F |
連絡先 |
072-775-0966 |
最寄り駅 |
伊丹駅(阪急) 北口 徒歩1分 |
公式サイト |
https://tsuboi-dc.jp/ |