広い視野を持った歯科衛生士を育成する

大手前短期大学
中川 裕美子 准教授
(歯科衛生学科)

calendar_month公開日:2025.01.20 | 更新日:2025.01.20

大手前短期大学 中川准教授

今回、インタビューにご協力いただいたのは、大手前短期大学 歯科衛生学科の中川准教授です。中川准教授は、長年にわたり歯科医療の現場で活躍され、現在は後進の育成に情熱を傾けていらっしゃいます。特に、広い視野を持った歯科衛生士の育成に力を入れており、国立国際医療研究センター、エイズ治療・研究開発センターでの勤務やベトナムでのボランティア活動など、数々の実績とご経験をお持ちです。

中川准教授は、歯科衛生士の仕事は単なる技術職ではなく、患者さんの健康を総合的にサポートする、やりがいのある仕事だとおっしゃいます。今回は、そんな中川准教授に、歯科衛生士の仕事の魅力や、大手前短期大学歯科衛生学科の特色について詳しくお話を伺いました。

歯科衛生士になるために

先生が歯科衛生士を目指されたきっかけは??

大手前短期大学中川准教授

昔から商売をしていた家庭でした。昭和の時代は「手に職」って言葉がよく聞かれた時期で、何か技術を身につけたいなって漠然と考えていました。大学進学も考えたんですけど、ちょうどその頃、歯科技工士学校に入学した先輩の話を聞いて、私も「あ、これいいかも!」って思ったんです。

ただ、子供の頃から少し喘息の気質があったので、粉塵の多い技工士の仕事は「ちょっと難しいかな…」って。歯科衛生士なら診療所の中で働けるし、粉塵も少ないからいいかもしれないって思ったんです。今思えば、かなり単純な判断だったかもしれませんけど。

高校3年生の2月、もうギリギリのタイミングでした。とにかく「何か資格を取りたい!」って気持ちでいっぱいでした。

歯科衛生士の仕事内容とやりがいを教えてください

やりがいって、正直すごく深いんです。最初は単純に歯を磨いたり、治療のサポートをしたりする仕事だと思っていたんですけど、実際に現場に出てみると、全然違うことに気づきました。

患者さんの表情が変わる瞬間。痛みから解放されて、久しぶりに笑顔になる瞬間。そういう小さな変化が、私たちの一番の喜びです。「すごく楽になりました」って言われたときは、本当に頑張ってよかったなって感じます。

歯科衛生士の仕事って、単に歯の健康をサポートするだけじゃないんですよ。患者さんの人生に寄り添って、自信を取り戻すお手伝いをする。そんな仕事だと今は胸を張って言えます。

当時、給料面はどうでしたか?

本当に厳しかったですね。当時の大企業で働くOLの友人たちは、ボーナスの話で持ちきり。私たち歯科衛生士の給料と比べたら、もう雲泥の差って感じでした。

勤務時間は9時から5時って言われても、準備や片付けを入れたら、朝8時出勤、夜7時帰宅みたいな感じで。昼休憩は長かったんですけど、拘束時間が長いし、正直、他の仕事と比べると、待遇面ではかなり厳しかったですね。

バブル期だったので、派遣の仕事とかすごく華やかで。経験なしでも金融や不動産の仕事に就ける時代。その中で歯科衛生士の仕事は、本当に大変でした。でも、今振り返ると、この経験が私をここまで成長させてくれたんだなって思っています。

大手前短期大学の魅力とは

今、准教授としてはどういうお仕事をなさってるんですか?

大手前短期大学キャンパス

歯科衛生士の仕事は、大きく3つの主要科目で成り立っているんです。

まず1つ目が歯科保健指導。これは主に歯ブラシの正しい使い方や、口腔衛生に関する指導を行う分野です。子供から高齢者まで、それぞれのライフステージに合わせた指導が求められます。

2つ目は歯科予防処置。歯石を取り除いたり、フッ素を塗布したりして、歯や口腔内の健康を守る仕事です。単に技術的な処置だけでなく、予防医学の観点から患者さんの健康を支えることが大切なんです。

そして3つ目が、私が現在主に担当している歯科診療補助。この分野は本当に幅広くて、奥が深いんですよ。口腔外科や矯正歯科での診療補助はもちろん、院内感染対策、さらには最近では高齢者の摂食嚥下機能の指導まで含まれています。

正直に言うと、全ての領域を完璧にカバーするのは難しいです。私自身も、まだまだ学び続けている最中です。ただ、以前、医療センターで感染症の部門に勤務していた経験から、感染対策については少し専門性があると自負しています。日本口腔感染症学会の認定委員も務めているので。

歯科衛生士の職業は、今まさに看護師さんが10年前にたどってきた道を歩んでいるような状況ですね。徐々に専門性が高まり、より深い知識と技術が求められる職業に進化しつつあります。

授業の中で生徒さんに対する想いはありますか?

長年の病院勤務経験から、何よりも大切だと考えているのは、他の職種のプロと対等に仕事ができる専門性を身につけることです。医療は多職種連携が重要で、自分の専門分野に誇りを持ちながら、他の専門家と協働できる能力が求められます。

ベトナムでの国際医療ボランティア活動は、その想いを強く感じた経験の一つです。訪問した病院のエイズ専門病棟のICUで、急遽口腔ケアを行い、それを病棟の看護師さんに指導することになりました。それまで10年以上現場で培ってきた技術のおかげで、慣れない環境でも対応できました。学生たちには、よく「1度身につけた技術は絶対に無くならない。だからこそ、今のうちにしっかりと基礎を固めなさい」と伝えています。単に技術を習得するだけでなく、その奥にある考え方や姿勢を大切にしてほしいんです。

プロとしての矜持を持ち、常に学び、成長し続ける姿勢。それが医療専門職に最も求められる資質だと私は考えています。技術は日進月歩で進化しますから、常に新しい知識にアンテナを張り、柔軟に学び続ける姿勢が何より重要なんです。

色んな学校がある中で、大手前短期大学の歯科衛生学科の魅力とは?

ベトナムでのボランティア活動が、大手前短期大学の素晴らしさを実感するきっかけになりました。エイズ孤児の施設で歯磨き指導の動画を作ることになったのですが、そこで学生たちの可能性を強く感じたんです。

最初は単純なスライドを考えていましたが、施設の方から「動画がほしい」と要望がありました。そこで、学生に協力してもらい、スマートフォンで編集したベトナム語対応の動画を作成することになったんです。歯科衛生学科の学生が歯磨き指導を行い、他の学科のベトナムからの留学生がベトナム語の音声を入れてくれました。

今後は学科を超えた大手前大学の動画撮影を担当する学生スタッフと連携することで、さらに可能性が広がります。インドネシア語、ミャンマー語などの、多言語対応も検討しているところです。東南アジアからの留学生が多いこともあり、本当に国際的な学びができる環境なんです。

学生たちの多様な能力、大学・学部を超えた協力体制。これが大手前短期大学の最大の魅力だと感じています。単に歯科衛生士の技術を学ぶだけでなく、国際的な視野も広げられる。そして何より、学生一人一人の可能性を最大限に引き出せる教育環境。それが、ここの本当の素晴らしさだと確信しています。

大手前短期大学は共学ですか?

そうですね。歯科衛生学科は男子学生を禁止しているわけではないんです。ただ、実際は男子学生があまり来ていないのが現状です。

私が東京の学校で教員をしていた頃は、夜間部の学年に数人の男子学生がいました。以前と比べると、男子学生も少しずつ増えてきていますし、性別に関係なく学べる環境になっています。

衛生士専門学校と大学内にある歯科衛生学科の違いは何ですか?

大学の歯科衛生学科では、一般教養や選択授業なども充実しています。一方、専門学校は月曜から金曜まで、朝9時から夕方5時まで、ほぼ決められたカリキュラムで授業が行われ、選択科目はほとんどありません。

専門学校は即戦力を育成することに力を入れているため、実習の時間も長いです。大学では1年の秋と2年の春・秋に実習がありますが、専門学校は1年生の春から実習を始めています。そのため、実践的なスキルを身につけやすいですね。
また、専門学校は身だしなみについても厳しく、髪の色や服装などにカラーコードがあり、それに従わないと染め直しを求められることもありました。一方、大学ではより自由な雰囲気です。学生にとっては、この自由さも魅力の一つだと思います。

実習に関しては、必要な時間数が決められており、歯科医院や病院、さらには小学校での保健指導なども含めて、バランスよく実習が行われます。学生たちは最初の1年半は比較的のんびりとキャンパスライフを楽しめますが、その後は本格的な実習が始まります。成績や技術の向上には、一生懸命勉強することと、実践を重ねることが大切です。学校での学びには限りがありますので、社会に出てからの努力が最も重要です。特に歯科診療補助は実技が多い分野なので、実技試験を設けて学生の技術向上をサポートしています。

例えば、合格基準に達しない学生には追加の練習機会を与えたり、冬休みに自宅で練習してもらい、その成果を写真で確認したりしています。キャリア形成としては個人的に、最初の3〜5年間は同じ職場でしっかりと腰を据えて働くことをおすすめしています。転職を重ねるよりも、一つの職場で経験を積むことで、その後のキャリアに大きく役立つと考えています。

歯科衛生士の状況と未来について

歯科衛生士は離職率が高いと聞くんですが、なぜですか?

大手前短期大学歯科衛生士学科

確かに、給料の低さや労働環境が離職の大きな理由の一つだと思います。国家資格上、歯科衛生士は歯科医師の指導の下、行為を行うという制約があります。つまり、独立開業ができないんです。これが、多くの歯科衛生士のモチベーション低下につながっている可能性があります。

ただし、中には自分がオーナーとなり歯科医師を雇用するような、強者の歯科衛生士もいるようです。将来的には、このような道も一つの選択肢になるでしょう。

歯科衛生士は待遇が良くないのでしょうか?

歯科衛生士の職場は、キャリアアップの道が限られているのが現状です。一般企業では主任や管理職への昇進の機会がありますが、歯科衛生士は異なります。

歯科大学附属の病院では、例えば「師長」になれる可能性もありますが、9割の歯科衛生士は個人クリニックで働いているため、主任にはなれてもそれ以上になることは難しいです。しかし、クリニックには患者さんと最も近い距離で働けるというやりがいがあります。

最近は専門性が高まり、様々な学会の認定を受けて講演活動をする人も出てきました。キャリアの選択肢は少しずつ広がっていますが、一生を通じて積み上げられるキャリアパスがあるかと言えば、まだ課題が多いですね。
このままでは、将来、優秀な人材が歯科衛生士という職業を避けるようになるのではないかと懸念しています。実際、転職先は多岐にわたり、歯科業界以外に完全に転職する人もいます。私の知っている技工士の中には、眼鏡屋さんや時計屋さんに転職した人もいます。

一方で、職場環境は少しずつ改善されています。育児休暇制度が整備され、以前は妊娠すると退職するのが当たり前だった状況から、育休を取得し、職場に復帰できるようになってきました。

芝池 高之芝池 高之

今、歯科衛生士が足りないと言われていますよね。人材が欲しいと思っている歯科医院が多くあると思いますが、大学としてどうされていますか?

大学には「キャリアサポート室」があり、学生の就職支援を行っています。履歴書のチェックや面接対策など、きめ細かいサポートを提供しています。歯科衛生士は人手不足のため、就職率は非常に高いです。キャリアサポート室は、学生により良い就職先を見つけられるよう、企業、病院、行政など、さまざまな選択肢を提示しています。

他の短期大学と比較して、就職に強いという点を売りにしているのが大手前短期大学。歯科衛生士の分野でも、クリニック以外でも多様な職場への就職が可能なのが魅力ですね。

大手前短期大学では、入試でどんな試験をされるんですか?

入試では面接が重要な役割を果たしています。面接では、歯科衛生士としての基本的な資質を確認するようにしています。

興味深いのは、志望動機についてです。私は志望動機そのものにあまりこだわっていません。多くの学生が「小学校の頃に虫歯が多かった」「親が歯科関係だった」といった似たような理由を話しますが、大切なのは学生の本質的な姿勢です。

面接では、学生の人間性や創造性、考える力を見極めようとしています。型にはまった答えではなく、自分の言葉で語る誠実さを評価しています。

「面接で、ちょっと変わった質問をする先生」って、学生から言われたことがあるんです。面接で「学校の夏服と冬服、どちらが好きですか?」って質問したことがあったんですよ。そしたら、ひとりの学生が「夏服は、通学している土地の名産品を使った布で作られているから好きです」って、すごく独創的な答えを返してきたんです。

緊張していたと思うんですけど、咄嗟にそんな面白い答えが出てくるなんて、本当にびっくりしました。この子は、どんな状況でも柔軟に考え、前向きな姿勢を持っているんだなって、強く印象に残っています。

この経験から、面接はただ質問に答えるだけの場じゃないと気づかされました。学生さん一人ひとりの個性や、これからどんな活躍をしてくれるのか、そんな可能性を引き出すチャンスなんですよね。だから私は、決まった答えを期待するのではなく、その子らしい素直な気持ちを聞きたいと思っています。

歯科衛生士からみた良い歯医者とは

中川先生から見た、良い歯医者とは?

大手前短期大学 中川准教授

良い歯医者さんを考えるとき、私はまず技術的な卓越性を思い浮かべます。例えば、セメントを使わずに木だけで完璧な構造物を作り上げる宮大工のような技術者を想像するんです。歯の治療においても、まるで職人のように、隙間なくピタッと合う修復物を作れる歯科医師や歯科技工士は本当に素晴らしいですよね。

ただし、机上の技術だけでは不十分なんです。治療の過程で注意しなければならないポイントがたくさんあります。例えば、調整中のかぶせ物を強引に外そうとすると境目がささくれ立ってしまったり、乾燥が不十分であると2次的なう蝕の原因になってしまったり、かえって歯に悪影響を与えてしまうことがあるんです。

噛み合わせの調整も極めて重要なポイントです。不適切な噛み合わせは歯ぎしりを引き起こしたり、作った修復物が取れやすくなってしまったりします。そのため、土台の形成から最終的な噛み合わせの調整まで、細心の注意を払う必要があるんです。

最終的には、患者さんとの信頼関係も重要です。技術的に優れているだけでなく、丁寧な説明と誠実な対応ができる歯科医師。そして、自分自身が治療を受けたいと思えるような医院であることが、最も大切なポイントだと考えています。

歯科衛生士さんの上手い下手ってありますか?

歯科衛生士の技術は、本当に奥が深いんですよ。単なる技術的な問題だけでなく、本当に繊細な感覚が求められる仕事なんです。クリーニングひとつをとっても、その仕上がりは驚くほど異なります。

具体的な例を挙げましょう。熟練の歯科衛生士は、クリーニングの手順を実にきめ細かく設計します。粗いブラシから始まり、徐々に細かいブラシやカップを使い分け、最後にワセリンでコーティングするように研磨していたこともありました。着色しにくくなり、患者さんからは喜ばれていました。

私自身も、このようなテクニックを実践していましたが、患者さんからの反応は本当に興味深いものがあります。中には「痛くても構わないから、しっかり取ってほしい」と言う方もいらっしゃいます。その方は歯石除去の際、多少の痛みがあっても、すっきりした後の爽快感を求めていらしたようです。

新人の歯科衛生士さんの成長過程も面白いんです。最初は未熟で、歯石除去も十分にできないこともあります。実習中に同年代の健康な人としか接していない彼女たちにとって、年配の患者さんの歯石除去は本当に難しい技術なんです。しかし、経験を重ねるごとに、その技術は驚くほど磨かれていきます。

メンテナンスの質も重要です。次の予約までの期間、歯の状態を最高の状態に保つための工夫。患者さんへの丁寧な説明。そして何より、患者さんに寄り添う温かな姿勢。これらすべてが、優れた歯科衛生士の技術なんです。

先生が衛生士として働きたい歯科医院ってどんな医院ですか?

理想の歯科医院を考えるとき、給与や福利厚生は確かに重要なポイントです。しかし、それ以上に大切なのは、医療人としての誠実さと、高い治療水準を持つ職場環境なんです。

まず給与面では、もちろん人並みの収入が得られることが基本です。健康保険や厚生年金などの基本的な福利厚生は当然のこととして、それ以上の支援があるかどうかが重要なんです。例えば、スタッフの成長を支援するための講習会への投資。これは単なる費用ではなく、長期的に優秀な人材を育て、維持したいという医院の姿勢の表れなんです。

ベテランの歯科衛生士の存在も極めて重要です。彼女たちは長年の経験から、通常では見逃してしまうような微細な変化も鋭く観察できるんです。そういった経験豊富な衛生士さんがいる医院は、明らかに質の高い医療サービスを提供できるんです。

最終的には、自分自身が治療を受けたいと思えるような医院。患者さんの立場に立って考え、一人ひとりに寄り添える温かな雰囲気のある職場。技術と心、両方のバランスが取れた歯科医院。それが、私が理想とする歯科医院の姿なんです。

芝池 高之芝池 高之

先生はHIV感染者を診られていたとお聞きしました

私の医療人生の中で、最も印象深い経験の一つが、国立国際医療研究センター、エイズ治療・研究開発センターでの勤務でした。それまで20年間、開業医の元で歯科医療に携わってきた私にとって、この新しい環境は大きな挑戦であり、同時にとても貴重な学びの場でした。

きっかけは、ある偶然でした。勤めていた開業医が閉院することになり、ちょうどその頃、後輩の歯科衛生士がエイズ治療・研究開発センターの求人を教えてくれたんです。最初は研究職としての募集で、当時39歳だった私は正直、少し不安と興味が入り混じっていました。面接の際、センターの雰囲気に魅力を感じました。彼らは年齢に関係なく経験豊富な医療経験を持つ、患者さんに向き合える人材を求めていたからです。

実際の仕事は、専門外来を中心に、専門病棟や院内口腔外科との密な連携が特徴でした。病棟では、自分で歯磨きができない患者さんの口腔ケアを行い、特にHIVで免疫が低下している方々のケアに力を注ぎました。研究職でありながら、患者さんと直接関わる機会も多く、とてもやりがいを感じていました。

勤務体系も魅力的でした。基本的に8:30から17:15までの勤務時間で、土日も休み、月に1回の有給休暇も取得できました。もちろん勤務時間後に自己研鑽、研究データをまとめるなどの業務もありましたが、これまでの開業医での経験とはまた違った、恵まれた環境だったと今でも感謝しています。

芝池 高之芝池 高之

HIVの患者さんの治療は大変なんですか?

HIV治療における感染対策について、多くの人が不安に思われると思いますが、実際はとても科学的で安全な方法が確立されています。最も重要なのは、感染リスクが他の感染症よりも低いということです。

例えば、針を刺してしまった場合には、曝露後予防内服という医学的対応があります。この方法を正しく実施すれば、感染リスクはほぼ100%防ぐことができます。医学データでも、その効果は裏付けられています。

以前は、HIV患者の診療を「特別」なものと考える傾向がありました。最初は宇宙飛行士のような特別な防護を想像されると思いますが、今では違います。通常の感染症対策と基本的に変わりません。

重要なポイントは、すべての患者さんに対して同じレベルの感染対策と敬意を持つことです。ガイドラインに沿った適切な感染対策を行うことが大切です。

医療技術の進歩により、HIV感染者の方々も他の患者さんと全く同じように、安心して診療を受けられるようになりました。私たち医療従事者の役目は、科学的な知識と人間的な温かさを兼ね備え、すべての患者さんに平等で質の高いケアを提供することだと信じています。

信頼できる医院を探されている患者さんへメッセージをお願いします

歯科治療は本当に繊細で、一歩間違えれば患者さんの人生に大きな影響を与えかねません。私自身、かつて不満足な治療を経験したからこそ、患者さんの気持ちがよくわかるんです。被せ物や詰め物の境目にフロスが引っかかったりする状況は、口腔内の健康を著しく損なう可能性があります。

正直に言いますと、一回の治療でずっと通い続けたいと思えるような医院を見つけるのは難しいものです。自分の直感も大切です。治療後に違和感を感じたら、それは無視してはいけないサイン。噛み合わせが合わなかったり、痛みや不快感が続くようであれば、勇気を出して別の医院を探すことも検討していいかと思います。

私が患者さんに伝えたいのは、歯医者に通うことがストレスになってはいけないということ。治療は単なる医療行為ではなく、患者さんの生活の質に直結するものなんです。技術的な高さだけでなく、患者さんの気持ちに寄り添える温かさも大切です。治療後、口腔内の状態が悪化するようであれば、それは本末転倒。治療の目的は口腔衛生の向上と健康維持であり、患者さんに安心と快適さを提供することなんです。

正直に言えば、私たち医療従事者は常に最高の状態で患者さんと向き合わなければなりません。一回の治療で患者さんの信頼を失えば、二度と戻ってこない可能性があるからです。だからこそ、患者さん自身が自分の健康と向き合い、納得のいく治療を受けることが何より大切なんです。

最後に歯科衛生士を目指している学生さんへ一言お願いします

歯科医療の世界に飛び込もうとしている皆さん、この素晴らしい仕事への情熱を忘れないでください。私の経験から言えるのは、この仕事は単なる技術職ではなく、人々の人生に寄り添う素晴らしい職業だということです。

大学生活は、単に勉強するだけの時間ではありません。特に大学では、クラブ活動や他学部との交流が、将来の大きな財産となります。私自身、日本歯科大学での学生時代、クラブ活動を通じて得た人間関係は、今でも大切な財産です。特にコロナ禍では、クラブのグループLINEが医療情報やワクチン情報の貴重な共有の場の一つとなりました。

これからの歯科医療は、技術だけでなく、多様性と柔軟性が求められる時代です。学生時代から、他分野の学生と交流し、様々な視点を持つことが極めて重要になってきています。単なる課外活動ではなく、将来のキャリアに直結する貴重な経験となるでしょう。

私が強調したいのは、この仕事は技術と心の両方が求められる素晴らしい職業だということ。患者さんと向き合う温かさ、最新の医療技術への探求心、そして何より人々の健康に貢献したいという情熱。これらすべてが、これからの歯科医療従事者に求められる資質なんです。

大学時代は、「よく遊び、よく学ぶ」精神で、様々な経験を積んでください。狭い専門性に閉じこもるのではなく、広い視野を持ち、他分野との協働を厭わない。そんな姿勢が、これからの医療プロフェッショナルには不可欠なんです。夢を持ち、情熱を忘れずに、自分の可能性を信じて前進してください!

この記事の監修歯科衛生士
中川 裕美子 准教授

中川 裕美子 准教授(大手前短期大学)

歯科衛生学科/

歯科衛生士として20年以上にわたり、開業医の元で臨床経験を積む。その後、国立国際医療研究センターに転職し、その後、国立国際医療研究センター、エイズ治療・研究開発センターの勤務を通じて感染対策や病棟の口腔ケアに従事。現在は大手前短期大学の准教授として、次世代の歯科衛生士の育成に力を注ぐ。

その他情報

所属名 大手前短期大学
公式サイト https://college.otemae.ac.jp/